子ども手当で手取り減少?

昨年の総選挙で、民主党が目玉政策として「子ども手当」を打ち出しました。
しかし、財源不足の問題があり、当初の「月26,000円」から後退して、「月13,000円」で決着しそうな状況です。
この影響で、子ども手当をもらっても、増税でかえって手取りが減少する世帯が生じます。

参考:負担増世帯が続出=子ども手当、半額据え置きで-第一生命

このことについて、手取りの増減のシミュレーションを行ってみました。

子ども手当の財源としての増税

子ども手当を支給する代わりに、所得控除を廃止して財源の一部に充てることが決まっています。
平成22年度税制改正で確定しているのは、以下の所得控除の廃止です(いずれも平成23年分の所得税から適用)。

  • 15歳までの子供の扶養控除の廃止
  • 16歳~18歳の子供の扶養控除を、所得税では63万円から38万円に、住民税では45万円から33万円に縮減

なお、民主党の公約には、配偶者控除の廃止も上がっていました。
しかし、平成22年度の税制改正では、配偶者控除の廃止は見送られています。

3歳未満の子どもだけがいる世帯は手取り減

月13,000円支給で決着すると、3歳未満の子どもだけがいる世帯は、手取り減になります。

子ども手当の前には、「児童手当」の制度がありました。
児童手当は、小学生までの子供がいる世帯に支給されます。
1人目/2人目の子供は1人あたり月5,000円で、3人目以降は1人あたり月1万円です。
ただし、3歳未満の子供は、1人目/2人目でも1人あたり月1万円です。
また、児童手当には所得制限がありました。
例えば、会社員の方で、妻と子ども1人が扶養親族なら、所得が608万円を超えると児童手当は受けられませんでした。

3歳未満の子どもが1人の世帯の場合、児童手当から子ども手当になることによって、年間で36,000円(1万円→13,000円×12か月)収入が増えます。
一方で、扶養控除が廃止されますので、所得税が38万円×税率、住民税が33万円×税率だけ増加します。

所得税の税率は所得によって変化しますので、一律にいくら増税とは言えません。
ただ、現状で所得税/住民税がかかっている方なら、扶養控除の廃止分の増税額は、子ども手当による収入増を上回って、実質的に手取り減になることは確かです。

最も税率が低い世帯(所得税5%/住民税10%)の世帯でも、所得税が38万円×5%=19、000円、住民税が33万円×10%=33,000円増税になり、子ども手当と差し引きで年16,000円の手取り減になります。
所得がもっと多い世帯では、手取り減の幅はさらに広がります。
また、3歳未満の子供が複数いる世帯だと、人数に比例して手取り減が広がります。

3歳未満の子供が1人の会社員の世帯で、年収と手取りの増減との関係をシミュレーションしてみると、以下の図のようになりました。
シミュレーションの条件は以下の通りです。

  • 所得控除は、基礎控除/配偶者控除/扶養控除/社会保険料控除のみを考慮
  • 社会保険料は年収の12%と仮定
  • 児童手当は、年収が約817万円を超えると所得制限で0になると仮定(配偶者と子供の2人を扶養親族と仮定)

3歳未満の子供が1人の場合の手取りの増減

なお、上の図を見ると、年収が多い世帯では手取りが増えています。
これは、所得制限で児童手当を受けていなかった高所得な世帯でも、子ども手当が支給されることが原因です。
このような世帯では、子ども手当による増収分が、所得税/住民税の増税による減収分を上回って、手取り増になっています(ただし、もっと高収入な世帯だと、所得税率がさらに上がるため、手取りがマイナスになります)。

配偶者控除が廃止されると手取り減世帯が大幅に増える

前述したように、今のところは配偶者控除の廃止は決まっていません。
しかし、将来的には、配偶者控除が廃止される可能性がないわけではありません。

子ども手当が月額13,000円のままで配偶者控除が廃止されると、手取り減になる世帯が大幅に増えます。
3歳未満の子供だけの世帯は、影響がかなり大きくなります。
また、小学生の子供が1人の世帯でも、手取り減になります。
さらに、中学生の子供がいる世帯でも、所得が多い世帯では、子ども手当の増収分よりも増税による減収分が大きく、手取りが減少します。
いくつかのパターンで手取りの増減をシミュレートしてみると、以下の図のようになりました。

配偶者控除が廃止された場合の手取りの増減

迷走が続く?

上で見たように、配偶者控除を廃止すると、手取り減になる世帯が多く出ます。
ただ、参議院で与党が過半数を割り、国会運営が厳しくなっている中で、配偶者控除の廃止は難しくなったと思います。

一方、今の状況が続けば、次の衆議院総選挙では民主党は敗北する可能性が高いと思われます。
自民党主体の政権になれば、おそらく子ども手当は廃止になるでしょう。

しばらくは迷走が続くことになりそうです。